平成12年5月から始まったｉモード対応のメールゲームで「北へ。」のキャラクターから任意のキャラクターを選択し、メールのやりとりによってドラマを楽しむ。各キャラクターが実在するような感覚を味わえるのも面白いところ。設定は本編の数カ月前となっている。キャラクター１人につき３－５ヶ月。１ヶ月３００円。
スタッフ
企画・柴田真人／企画・ゲームでザイン・横山裕一／プログラム・JAVA太JAVA朗、木村信行／キャラクターデザイン・NOCCHI／シナリオ・ぷるるん／シナリオ・嶋崎賢治、酒井祐介／シナリオプロット嶋崎賢治、川崎ヒロユキ、高山カツヒコ／スペシャルサンクス・菅野ウタロウ／協力・(株)リクルート、北海道じゃらん／ディレクター・志村昌弘、横山裕一／プロデューサー・柴田真人
物語(私の場合のみで全ての人が同じではありません)
「初めまして」と薫さんのメールが入ってきました。11/15です。「私は、椎名 薫、札幌の北海大病院で研修医をしています。友達に紹介されて、メールを始めてみたのだけど、ちゃんとお話しできるのかしら？まあ、せっかく出会えたのだからこれからよろしくお願いしますね。ところで、あなたは女性の方？」
男性です。男の人とメール交換するのって初めてらしく、どんなこと話せばいいのかちょっと迷っている薫さん。とりあえず、こちらのことを聞きたいので教えてほしいという。まずは何をしている人かという質問。会社員です。どんなお仕事をしているのかしら。サラリーマンですよ・・・。
お仕事大変ですか？体には気をつけてくださいね。ストレスがたまるのが生活において一番よくないことですから・・・と気を遣ってくれるよ。うれしいねオイ。「私の言葉遣い、ちょっと堅苦しいかしら？メール交換なんだから、もう少しフレンドリーでもいいかな？あなたを苗字で呼んでいるけど、特別に違う呼び方があるならそっちで呼ぶけど？」とか言ってます。いいです苗字で。これからはメール友達として仲良くしましょうね。＞薫さん。
さて、何か聞きたいことはあるかという問いかけに取り敢えずは「どんな人？」という選択肢を選ぶ。「どんな人間だと思う？どんな人間だったらいい？」と質問を質問で返す。頭よさそうではないかな？「そう、私って頭がよさそう？理屈っぽい女だとか思われないかしら？自分でもよく思うのよね。こんな女誰が好きになるんだろうって・・・」
好きよ、そういう女性「うふふ、ありがと。でも、そういう殺し文句好きじゃないの。こんなだから可愛くないって言われるのかしら」分かってるなら止めてくださいよ。私のメールは休憩時間にまとめて見てるから適当に返事をしてくれということだ。何かしら返事があると嬉しいものだから・・・そうですね。研修医って何をしているの？
「研修医は、先輩の診療内容を記録したり資料の整理とかが主な仕事かしら。だから、まだ医者らしい仕事はしてないの。」内科を専科にしたのは、昔体が弱くてまともに運動できる体じゃなかったからだそうだ。そういう目に見えない煩いに困っている人の役に立てたらいいなと思ってのことだそうだ。趣味・・・ですか私の。薫さんは読書だそうだが、私もですよ。何しろ同じクーンツファンですからね。ミステリーはいいですよ。そうそう、先が読めないところが面白いですよね。私は本屋さんで買ってますけど、薫さんは図書館ですか。
「私は古本屋とか図書館を利用するわ」でも、新刊は勿論のこと本屋で購入するでしょうけど、時間を忘れてしまうほど本屋にいるって？日付が変わるほど？「北海道の本屋は結構遅くまでやっているとこが多いの。夜中の１２時くらいまでかな・・・。」なるほど。仕事帰りに行くんですね。
「遅くなっても買いに行けるからすごく助かってるわ」なんで、遅くまでやってるんでしょう。最近は忙しくて本を読む時間が取れず、イライラしている彼女。「どんな時に本を読んでるのかしら？」そうですね・・・寝る前かも。「そうなのよね。本って夜寝る前にどうしても読んじゃうのよね。あなたは、遅くまで本を読んでるから、夜型の人間かしら？」
そうです。「あ、やっぱり夜型の人間なんだ。そういう生活続けてるのは体に良くないわよ。人間の体は朝起きて、夜寝るようにできてるんだから。」はあ。なるべく早く寝ます。体が昔から弱くて外で遊べず、友達も少なかった薫さんにとって、本というものは生きていられる唯一の世界だったらしい。
「最近職場で自分の立場に不安を感じるの。私は研修医で立場的にはそんな上じゃないけど。看護婦さんや患者さんから見れば医者に変わりないんですもの・・。ただ、まだ自分に自覚というか、自信みたいなものが持てないの。」わかりますよ、その気持ち。人間関係がうまくいっていないような気がするんですね。上辺だけのコミュニケーションで人間関係を・・・。「ごめんなさい。あなたに話すような話題じゃなかったわね。」
いえ、いいんですよ。もっと聞かせてください。「いえ、いいの。心配してくれるのはうれしいわ。でも、これは私自身の問題だからね・・・ごめんなさい。それにしてもあなたは優しいのね。普段からそんなに優しいの？」そんなことないさ。「あら、そうなの？謙遜してるだけじゃないかしら？それとも自分ではわからないのかもしれないわね。・・・でも、優しすぎるっていうのも考えものよ。時には損することだってあるんだから。何事もバランスは大切よ・・・。」
そんなことはわかってますよ、先生。「昨日は暗い話でごめんなさい。今日は仕事が早く終わりそうだから買い物にでも行こうかと思ってるの。久しぶりに服でも見に行こうと思うの。札幌そごうにでも行ってちょっとハメをはずしちゃおうかな。」そうですね・・・もう札幌そごうもつぶれてなくなってしまうから、今のうちにいった方がいいですよ。ひょっとして閉店セールとかで安売りしてるかも！で、どんな服装してるのさ。
「そうねぇ・・若い子が着るような個性的な服装はしないかしら。まぁ普通よ。こだわっているものもこれといってないし、好きな色にしたって原色っぽいものはあまり好きじゃないわ。あなたは私がどんな服を着ると思ってたのかしら？」大人っぽい感じだと思うんだけど。「う～ん、大人っぽいかどうかはわからないけど、落ち着いた感じの服は好きかな。結構当たってるわよ。」年が年だから流行の服を着ることに抵抗を感じる薫さん。似合ってもない服を着て浮いちゃうんじゃないかって・・なんか共感してしまうよ。全然くだらなくないです。
「今日から指導医の医師の下で、本格的な研修が始まるわ。診療や手術に立ち会ったりするのよ。といってもやることは雑務や事務的な仕事ばかりだけどね。指導医の先生が新しい患者さんの主治医になるの。その患者さんのお相手をするのも、私の仕事になりそうね。」それでも、私のメールはちゃんと読んでくれるとのこと。がんばれよ、薫ちゃん！
「ありがとう、でも、いきなりくじけそうだわ・・。」担当になって患者さんがちょっとやっかいだと。苦手なタイプですか。女の患者ですか？「年は１７歳で、高校生の女の子ね。悪い子ではないんだけど、ちょっと常識外れな子かな。」誰だい・・・ひょっとして梢ちゃんかな・・？そういえば梢ちゃん、急にメールを他の人に任せていなくなっちゃったからな。どんな感じの女の子さ。
「そうねぇ、今時の女の子って感じかしら？髪型は個性的なパーマをかけてて、肌も日焼けしてたわ。しゃべり方もコギャルっぽくて、底抜けに明るい子よ。」これはオリジナル・キャラみたいですね。ま、ああいうのと話慣れていたら、それはそれでこわいよ。「かわいい車を発見／この間の昼休みに研究室のパソコンでインターネットやってたんだけど、結構いい感じの車を発見しちゃったの。フィアット・バルケッタっていう車なんだけど、知ってるかしら？」
知ってますとも。あのオープンカーね。「あんな車でドライブしてみたいわね・・・」うむ、あれはいい車だよ。是非お薦めだね。「知ってるの？じゃあ、フィアット・バルケッタの駆動方式はなんだかわかるかしら？」ＦＲ式だ。「残念。ハズレよ。あなた適当に言ったでしょう？フィアット・バルケッタっはＦＦ車よ。覚えておきましょうね。」
ちょっと間違っただけじゃないか・・・ちぇ。悩むな！買っちゃえ！「ちょっと厳しいみたい・・・。ちょっと考えが早計だったわね。大きい買い物ですもの。もうちょっと様子をみてみるわ。」最近は本を読んでない、忙しくてヒマを見つけることが出来ないと悩む。私ですか？私もなかなかね。
「そっかぁ、読もうとはしたんだ。私と一緒ね・・・読みたくても読めない。で、どんな本を読もうとしたのかしら？」いや、まだ内容は知らないんですけど・・・「その本の名前とかは知らないの？」女医の欲情です。「うーん・・・聞いたことがあるようなないような・・・。まぁでも面白そうな本だから、私も探してみようかしら。そしたら、代わりに読んでおいてあげるわ。内容も教えちゃおうか？うふふ、なんてね。お互い読み終わったら、女医の欲情についてお話しましょうね。」
まじっすか？あ、いよいよフィアット・バルケッタが納車ですか。そういえば、患者だったか、患者の知り合いだったか忘れたけど、車のディーラーさんが居て安く買えたんだっけね。「初ドライブは・・・うーん、何処にしようかしら？まぁ、例の患者さんと行くことになってるから、あの子に任せようかな。あなたとは、その次にドライブしましょうね。」はぁ。約束するわって言われてもなぁ。納車されましたか。「これから近所を流そうと思ってるんだけど、ｉ－ＭＯＤＥをあなただと思って助手席に置いておくわ。」わーい、嬉しいな。
「そ・・・そう？喜んでもらえて光栄だわ。それにしてもフィアット・バルケッタは本当にいい車よ。」よかったね、薫ちゃん。なかなか、いい休日だったそうで何よりです。「そうそう、寄り道してたらいいお店見つけたの。「オステリア バシル」っていうイタリア料理屋さんだけど、あなたはイタリア料理は好き？」そりゃもう。「それならお勧めね。パスタも色々あるし、その他のメニューもたくさんあるわ。今度一緒に行ってみようか？」
おれは東京に住んでいるっちゅーの。まぁ、気長に・・・。「うふふ、そう言ってくれると思ったわ。まぁ、機会があったら・・って、私いつもこればっかりね。本当にごめんなさい。」そういえば、クリスマス。「あなたは、どんなクリスマスを過ごしているのかしら？ここ数年、ずっと一人のクリスマスだったけど、今年はあなたがいるわね。うふふっ、ちょっと迷惑かな？それじゃ、メリークリスマス。」
うむ。メリークリスマス。今気がついたんだけど、このイベントはクリスマスじゃなきゃ登場しないな。ということは、時期によって内容が変わるわけだ・・・うう、これはなかなかシビアなゲームですわ。「明日、前から約束してた、あの子とのドライブに行ってくるわ。誰かとドライブするなんて、本当久しぶり。でも、不思議よね・・ついこの間までは顔も知らなかったのに、今こうしてドライブの約束なんかして・・・。あなたとのメール交換もそう。最近は出会いに恵まれている・・・そんな気がするわ。」
そのうち、もっと素敵な出会いが待ってるでよ。で、どこにドライブに行くのかな？「まだ決まってない。今あの子が行きたい場所をリストアップしてるみたい。」なるほどね。とりあえず、薫ちゃんは仕事を終わらせなさい。「おはよう。私はこれからあの子を迎えに行くの。あの子、行きたいとこがいっぱいあるって言うから、今日はメールできないかもしれない。じゃあね。」ばいばい。って、さすがに二人同時のメールじゃ、記録しきれない。さて、薫さんは患者の女の子とドライブに行く。「やっぱり若い子は元気ね。病気を患っているなんて思えないくらい」とかいう。
最初は「はまなすの丘公園」周辺にはホテルとかビールやレストランもあり。その次が「北海道立文学館」へ。そこは、小説や俳句、アイヌの口承文芸とかが展示されているところだそうだ。「久しぶりのドライブだったけど、楽しかったわ。」と満足げな彼女だが、「最近、ちょっと私が遊びすぎだと思わない？だから、最近ちょっと不安・・・」たまに遊んだ方が能率はあがりますよ。「それもそうよね。詰め込みすぎても、良い結果は得られない。でも、今はそんなに起用に物事を考えられないわ・・仕事をしていた方が落ち着くのよね」
困ったやつ。そんなにおり、どうも職場で悪い噂が流れているらしい。「患者と話ばかりして仕事をしてないとか、患者を利用して車買ったとか・・その患者というのはあの女の子のことなんだけど、「利用」って言葉はちょっと痛いわね・・そんなつもりじゃなかったんだけど、心のどこかでそういう気持ちが少なからずあったと思う。」などと自己嫌悪に陥る彼女。まあ、前向きに考えなよ。
「あなたは私が悪くないと思うんだ？私自身わからないわ・・全てを見つめて前向きに考えないとだめなのよね・・」と落ち込んでいる。仕方ないなぁ・・とはいうものの職場でのそういう噂はつらいよね。「悩んでいても仕方ないから、気を取り直して仕事に集中するわ」無理しない方がいいよ。「そうかもしれない。無理して前向きに考えていたけど、もう考えることさえ苦しいわ。あの子の容態が芳しくないの・・・」
薫さんは、どうにもならないくらい落ち込んでいて、手の着けようがない。でも、医者の仕事は心配する子じゃないはずだ。「あなたは鋭いのね・・医者の仕事は心配する事じゃなくて、患者さんの病気を治し、不安を取り除いてあげること・・・でも、今の私には何もできないのよ。指導医の先生にも『君は患者に干渉しすぎる』って。周りの人には、あの子と私の関係は、ただ戯れるだけ・・・そう見えるのかもしれない」
自信をもって、薫さんは悪くないよ。それでも、薫さんは自分に自信が持てずに苦しんでいる。患者の女の子も落ち着いて今は眠っているらしい。「ごめんなさい、こんなこと、あなたに話すようなことじゃないのはわかってる。でも、誰かに話を聞いてもらいたかった・・・ありがとう、話を聞いてくれて。」私に出来ることは、その程度ですね。「あの子はぜんそくなの・・・」私も喘息だったから、つらさは分かりますよ。しかも重度の・・・か。あれは苦しいよ確かに。呼吸が出来なくて・・・思い出すのも嫌だ。「小児ぜんそくって、体が成長するにつれて治ることが多いの。だけど、あの子は、もう１０年以上も苦しい発作と戦っているわ。」つらいなぁ。
「ぜんそくは、いつ発作が起きるかわからない・・。今回は致命的な発作ではなかったけど、私に責任があると思うの。彼女の元気そうな姿を見て安心しきっちゃって・・それでドライブなんか行ったりして・・・私は医者なのに、何をやってるんだろう・・。」そんなに悪いことをしたとは思わないけどな。「もう何が悪いことなのか、何が良いことなのかなんてわからなくなっちゃったわ・・・だって、もし私のしたことが最悪の結果を招いたかもしれないって思うと・・・ごめんなさい。」
私の励ましも彼女には通用しなく、後ろ向きの思考に走ってしまう。優しさ・・・ゆえか。「私は人に優しくできる性格じゃない・・・今までだって・・きっとこれからも。あの子とドライブに行ったことを指導医の先生に話したわ。そしたら、研修項目から逸脱しているしてるって。研修過程１からやり直しって言われちゃったわ。おまけにしばらく来なくていいって・・。でも、どうしてだろう・・・なんだかすっきりした気分・・。」
どうもこの人は自分のしたことについて過ちを指摘してほしかったみたいだな・・・怒られてすっきりしているなんて。停学処分ってやつか。「でも、今回のことは異例な事よ。謹慎を受けた研修医なんて聞いたことないもの・・そうそう、あの子の容態良くなったから話をしにいったの。そしたら「ごめんなさい」って言われたわ。どうして？どうしてあの子が謝るの？どう考えたって、私の責任なのに、わからない・・・わからないわよ。」
その子は、薫さんのことが好きなんだよ。「そうだったら安心できるんだけど・・私、人を見た目で判断するクセがあるの・・・最初はあの子のこと偏見の目で見てた。でも、一定の距離から話をしていくと、違った物が見えてくる。その距離を縮めれば、また新しいものがそこにある・・・。彼女と出会ってから、気がついたことがあるわ・・・私って、今まですごい嫌な女だったんだな・・・って。」うむ。そうかも。さて、いきなり休暇になってしまった薫さんは、ヒマをもてあます。無理しているなぁ。「でも、することが何もないって本当に苦しいことね・・・一人で居るこの時間・・・本当に孤独・・こんなこと言うと変に思われるかもしれないけど、生きている感じがしないわ。」
そいつは、休めっていう信号だよ。「そうね。せっかくの機会ですもの。思い切ってのんびりしたほうがいいのかもね。・・・せめて今私が一番やりたいことを見つけたいわ・・。で、やっぱりドライブに行くのかい。また「ハマナスの丘公園」にドライブに行くらしい。夕日の中で散歩か・・・絵になりそうだ。
「とんでもない。こんないじけた女を絵にする必要はないわ。絵になるっていうのは、私の２０メートル先にいるカップルのことを言うのよ。」とはいえ、夕日の中を気持ちよさそうに散歩する彼女であった。で、その帰り。「女の子とが暗い夜道を歩いていたの。それがどうも様子がおかしいから車を止めたんだけど、その子はもうフラフラで倒れそうだったのよ。で、その子の顔をよく見たら、思い出したの。その子、ちょっとした知り合いだったのよ・・。」
どうやら、半年くらい前に、診察を受けに来た子らしい。で、車で家まで送ったらしい。いいことしたね。家の人にお礼を言われて、「私は医者なんだ」と実感したそうだ。何とか立ち直ったらしく、研修に戻ることにした薫さんは、少し大人になったらしい。「でも、実は感謝しているの。最初からやり直すことで、見失ったもの・・・見えなかったものを発見できるんじゃないかって。」と新しいチャンスとして認識できたみたいだ。そうそう、その調子ですよ。
「これが一番いい結果だったと思えばいいわけよね。それに、私はもう一回医者って何なのか考え直したいの。あの子と会って、私の考え方は揺らいだの・・・人の見つめ方・・・人との関わり方・・・それこそ医者の仕事・・そう考えるようになったわ。」医者になってよかったと思ってる？「よかったと思ってるわ。仕事は苦しくて、まだつかめないこともあるけど、何か小さなやりがいみたいなもの・・・それを感じることができるようになったわ。だから、医者という道を選んでよかった。そして、そう思えるようになった自分が本当にうれしい。」なるほど・・・。
「私は自分が医者であるというこについて考えるようになったの。あの子は私のことを医者として、人間として必要としてくれたと思う。それなら、あなたは私のことを必要としてくれるかしら？うふふ、なんてね。答えなくていいわよ。今はまだ知りたくないものもあるしね。」と意味深な台詞が気になるなぁ。おっと仕事がついに再開ですか。いい機会だと思えるなんて大人ですね。「見失ったものが見つかると信じてね」
研修医も楽じゃないのね。「だけど、やっぱり第一過程の仕事は退屈ね。資料とカルテ整理、その他の雑用・・・。わがままかもしれないけど、もうちょっと手応えのある仕事がしたいわ・・。」ぜいたくいうもんじゃないですよ。「これも大切な仕事・・・全部患者さんのための仕事なのよね。そう考えると気が抜けないわ。」そのとおりだ。「まだまだ未熟。研修、最初からやり直すことが出来て本当に良かったわ。もっともっと勉強しないと・・。」
人生は最後まで勉強ですよ、そういう意味とは違うかもしれませんが。おや何？この間の本を読んだって？「女医の欲情」を？「結構面白いじゃない。あの本を読んだらあなたの好みが分かったような気がするな・・。なんとなくだけど、あなたの明確なイメージが湧いてきた気がするわ。結構私と似ているかも・・・。」
えっ？まさか「何ていうのかしら。警戒心が強いかな。」あららら、あたってますよ先生。「本当？自分のこと警戒心が強い方だと思うんだ？あなたは人付き合いは得意なほう？」苦手っすよ～。「やっぱり？人付き合いって苦手？って、こんな風に言っちゃいけないわね。でも、よく考えたら、こんなこと心配する必要ないわよね。だって、今こうしてあなたと人付き合いできているんですから。苦手って言い張るのもそろそろ辞めた方がいいのかもしれないわね。」
って、おいおい。漢字の間違いが多いな。「止めた」だろうが。本当にあんた女医なんですか？医学よりも先に漢字を勉強しなさいよ・・・これはシナリオライターのぷるるんに言うべきだな。ったく最近のシナリオライターは漢字も知らないのかよ。ちっ。「またドライブに行こうかと思っているの。今度は少し遠出してみようと思ってね。」って、あんた勉強はどうするんですか。「シーサイド岬ラインコース、阿寒まりも国道コース・・・どちらがいいかしら。」
阿寒まりも国道コースはどんなものなんですか。「阿寒まりも国道は国道２４０号線のことなの。釧路から阿寒湖までの道のりで、８５ｋｍくらいだっけな？ 途中絶景のスポットが目白押しらしいから、飽きることはないと思うわ。秋頃になると、イベントもたくさんあるらしいわよ。」それで、シーサイド岬ラインコースは？
「シーサイド岬ラインは、その名の通り海岸沿いを走れるコースね。釧路から霧多布岬までだっけな？ １１２ｋｍの長旅になるだろうけど、途中絶景のスポットが目白押しらしいから、飽きることはないと思うわ。海岸沿いっていうとこがポイント高いわよね。」それなら、まりも国道コースがいいんじゃないか。
「そうね、「まりも国道」に行くことにするわ。私も前から行きたいと思っていたの。そうそう、目的地の阿寒湖畔には温泉街があるのよ！ 実を言うと、今回のドライブの計画は温泉がコンセプトなの。前も言ったでしょ？ また温泉に行きたいって。意外と早く行けそうだわ。」おやおや、温泉フリークだな。「・・・うふふ、温泉フリークかぁ。そうかもしれないわね。
でも、温泉フリークって言われるとちょっとね・・。悪い気はしないんだけど。まあ、いいわ。とにかく１ヶ月振りの温泉だから、今から楽しみだわ。」そうか、楽しんできてくださいよ。
「おはよう、平さん。今日は久しぶりに買物に行こうかと思うの。『クシュカ』っていうアクセサリーのお店が札幌にあるんだけど、たまにはアクセサリーを見に行ってもバチは当たらないわよね。いいのがあったら、思いきって買っちゃおうかしら。」いいね、アクセサリーは。薫さんにはきっと似合うでしょう。「うふふ、ありがと。お世辞でもうれしいわ。まあ、アクセサリーはどんな人にでも似合うようにできてるものだけどね。平さんはアクセサリー好き？」結構好きですよ。
「そう、アクセサリーは好きなのね。じゃあ、平さんはどんなアクセサリーが好きなの？」リングですかね「へぇ、リングが好きなの？ 私もリングは好きよ。めったにはめないけどね。一応私の好みは、あまり派手なのじゃなくて、シンプルでスマートな指輪が好きかな。うふふ、まあ忘れてもいいけど、一応ね。」なるほど。「ねぇ、あなたはアメリカに行ったことってある？私は前に行ったことがあるんだけど、もう一回行ってみたいわ・・・。」
後輩がアメリカに留学してて帰ってきたらしい。その子の話を聞いてたら、大学時代にアメリカに行ってたことを思い出したんだ。え？私はアメリカに行ったことがあります。「いいわね。私も行ってみたいわ。もし、またアメリカに行くことになったら連絡ちょうだいね。私も頑張ってスケジュール調整してみるわ。うふふ・・・。」
何でもいいんですが、薫さん。そのうふふ・・・・って多くないですか？メールで、うふふ・・・って笑う奴は少ないぞ＞ぷるるん。何か気色悪いから止めてください。「おはよう、今、釧路に向かってるの。今日と明日は仕事が休みだから、例の阿寒まりも国道コースへドライブに行くわ。」アクティブな人ですね・・・っつーか、一人でよくひょいひょい出かける気になるなぁ。「ファミリーレストランすいへいせんというとこで休息中。ここのお店はテラスから海が見えるのよ。やっぱり海っていいわね。ずっと見てても飽きないわ。」そういうことってあるよね。ぼうっとして見てるのがいいかも。
「そうそう、それだけで満足できるのよね。何度見ても飽きることのない、無限の美しさ、そんな感じがするわ。阿寒湖温泉街までもう少しよ。」安全運転で頼みますよ。薫さんは運転が怖いからな・・・まぁ、綺麗な海を見た後だから大丈夫か。「こんばんは、温泉街についたわ。今、『寿し忠』っていうお寿司屋さんで夕食をすましてきたわ。ここには『マリモの涙』っていうメニューがあるんだけど、すごいわよ。さあ、いよいよ温泉街に行くわ。うふふっ」
また、うふふが始まったよ(^_^;)。「昨日の返事だけど、あんなこと言ってくれた人って、あなたがはじめてかもしれないわ。うふふ・・・なんでもない。まずは、『白湯山展望台』に行くつもりだったけど、展望台まで９０分ぐらいの登山なの。ちょっと時間がないから、今回は見送ったわ。」それは残念ですね・・・あれ？私は昨日なんか意味深なこと言いましたか？忘れた。「こんにちは、絶景のスポットを見つけたわ。『滝口』っていうとこで、阿寒川の落ち口なのよ。最後の最後に素晴らしいとこに来れてホントよかったわ。また、来たいわね・・・。」いい旅行でよかったですね。
「ええ、楽しかったわ。特に最後に行った滝口は最高ね。もちろん温泉も。うふふっ・・・。そうそう、さっきまりも国道沿いで寄り道してたら「丹頂鶴自然公園」っていうとこなんだけど、そこではタンチョウを放し飼いにしている世界で唯一の公園なんですって。タンチョウの仕草ものびのびとしてて、とても優雅。なんか、うらやまくなっちゃったわ。さ、急がないと。」しつこいほどに、うふふを繰り返すなぁ。そんなに笑うキャラじゃないんですが。
「旅の終わりに釧路の『浜番屋』というお店にいるの。最後に釧路のカニを食べていこうかなぁってね。私が時間を気にしていたのは、その瞬間が流れる時間がとても早く感じられたから。ホント、あっという間の２日間。今回のドライブは、私自身の生き方を変えていける・・・そんな予感のするドライブ・・・だったかな。うふふ・・・私ったら何言っているのかしら。ごめんなさいね。」そんな大げさな・・・・っつーか、なかなか豪快だな、メル友の薫さんは。
「仕事仕事・こんにちは。昨日、一昨日は楽しいドライブを満喫できたわよ。さすがに車の運転しっぱなしはツライけどね。おかげで肩が痛いわ。今日なんか寝坊で遅刻したりして・・うふふ。さ、仕事仕事！」遅刻はいかんと思うぞ・・・休みをとっておいて。それは最近は明るいね。「そうかしら？え？私が最近明るい？そうかしら・・？意外だわ。誰かに「明るい」なんて言われたことないのに・・・。逆のことなら、よく耳にするんですけどね・・・。でも、そういうことも聞かなくなった気がするわ。本当、ここ２ヶ月の間に色んな事が変わった気がする・・・あなたが、私のこと「明るい」って思うようになったのは、私が変わってきたってことなのかしら？」前とは印象が違うっていうか、そんな感じなんですよ。
「本当？そっか・・前と印象が違うのか・・・自分ではピンとこないわね。それじゃあ、今まで私とメール交換してきたあなたとしては、今の私はどう思う？客観的に教えてほしいな。」素敵な人になったかな・・。「ふ～ん、素敵な人ね・・・。本当にそう思ってるのかしら？まあ、そう言われて悪い気はしないんだけど・・・。ちょっと恥ずかしい気持ちよね・・・。素敵な人間なんかじゃないのに『素敵』だって言われると、その人を騙した気分にさえなるわ。だから・・あなたも私のこと、素敵な人だなんて思わないでね。」ああ・・薫さんは難しい人だ・・・ちょっと褒めただけでここまでひねくれた考えをするとは！ゲームの人格そのままだけど(^_^;)。
「ちょっと相談・おはよう。朝から、こんなこと言うのもなんだけど、ちょっとあるの。いいかしら？」はいはい、なんでござんしょ。「研修仲間が・・・ええ、それがね、実は大学の頃から一緒の研修仲間が辞めることになったの。理由を聞いてみると、『結婚することになった』ですって！少ししょっくだったわ・・・。こんなに早く結婚を決めるなんて・・。まだ、医者らしい仕事なんか一度もしてないのに、何のために研修医という道を選んだのかしら・・・。やっぱり２０代中盤だから？私もそういうこと考えなきゃいけない年なのかな・・。」
人それぞれなんじゃないの。「おかしいわね・あなたはそう思ってくれるのね。私もそう思うわ。でもね、考えたくなくても考えちゃうのよ。彼女の人生は彼女の人生だし、私の価値観を押しつけるわけにはいかない。それでも、比べちゃうの・・。変な表現だけど、なんだか置いてかれた気分なのよね・・・。」
薫さんは薫さんでしょ。「そうね・そうね・・私は私。彼女が突然結婚することになったのも、彼女らしいと言えば彼女らしいし。先を越されたなんて考えることの方がナンセンスかもしれないわ・・。それに、よく考えたら、今の私には結婚はまだ必要ないのよね。まだやり遂げてないことはたくさんあるし。今は少しでも早く研修過程を終わらせないと。夢をあきらめていない私は、ある意味彼女に買ったわけよね？うふふっ、そういうことにしておけばいいんだわ。」
くわっ！自分で勝手に悩んで自分で解決したよ。ま、いいんですが・・・。「今度は本当に・おはよう。昨日はごめんなさいね。相談のつもりだったのに、結局私の自己完結で解決しちゃって。ホント、何のために相談したのかしら・・。そこで、度々悪いんだけど、また新しい悩みが増えちゃったの。今度はあなたの協力がどうしても必要なのよ。聞いてくれるかしら？」車でもぶつけましたか(^.^)。
「縁起でもない・もう、縁起でもないこと言わないでよ。車はぶつけてないわ。今度は大学時代の後輩に告白されたのよ・・。その人は医学部の後輩で、来年私と同じ研修医になる人よ。私の勤める病院と医学部の研究室って、目と鼻の先なの。だから顔を合わす機会が多いのよね・・・。だからって、まさか後輩に告白されるなんて思ってもみなかったわ・・・。」なんだって！断っちゃって！
「興奮しないでね・あら、なんで怒るのかしら？まあ、そう言ってくれるのは結構嬉しいけどね。うふふっ。で、私が悩んでるのは、つきあう付き合わないではないの。私の悩みは、断る時何て言って断ろうか悩んでるのよ。変に遠回しに断っても相手に悪いだろうし「友達でいましょう」って言っても、ふられたことに気が付かない場合もあるから・・・。言葉って難しいわよね。あなたは、なんて断ったらいいと思う？」
っつーか、もう断ることが決まっているとこが相手の方も淋しいですな。適当に断ってください。フられた奴は放っておいてと。物語の重要なキャラクター、入院患者の女の子が再登場。どうも、最近は元気がないようだ・・・東京の病院に移ることになって気落ちしている様子。北海道を気に入ったから、行きたくないんじゃない？
「北海道が気に入ったからか・・。それだけならいいんですけどね。北海道だったら、来ようと思えばいつでも来れるもの。多分、他に理由があるんだと思うわ・・。
あまり詮索するのはよしましょうか・・。
彼女、あさってにも東京の病院へ移るそうよ。未成年だから、札幌に一人で残るわけには行かないものね・・。
なんだか寂しくなるわ・・。」
そうだね。まぁ、仕方ないんじゃない。お見舞いに行ってあげたら、彼女も嬉しいんじゃないですか。
「彼女も嬉しい・・か。それなら私も嬉しいんだけどね。そう言えば、私が診察するって言ったら、彼女もちょっとだけ笑ってくれたっけ・・。
彼女の診察だけど、もう大分いいみたい。最近は発作もめっきり減ったことだし、東京での生活も大丈夫なんじゃないかな・・。
でも、とうとう明日でお別れか・・。まさかこんな形で別れるとは思っても見なかったけど、彼女、東京でもがんばって欲しいわね・・。」
そうか、ま、東京も悪い所じゃないですよ。住めば都というか。
「おはよう、平さん。今日はあの子の最後の診察があるの。今日は特別に、私が診察をさせてもらうことになったのよ。
私があの子を診察するのは、今日が最初で最後か・・。なんか複雑な気持ちだわ・・。でも、私が『医者』として彼女に何かしてあげられるのよね。
さ、しっかりしなくちゃ！」
しっかりしてください。
「大変よ！ 平さん。
あの子がいなくなったの！
今、看護婦と私で病院内をくまなく探してるんだけど、どこにもいないわ・・。一体どこに行ったのかしら・・。今日は東京に帰る日なのに・・。」
何か君に伝えたいことがあるんじゃないの。
「ええ、私もそう思うわ。だって・・まだ彼女の口からは何も聞いてないもの・・。
東京に戻るのか、それとも札幌に留まりたいのか・・。もし、彼女が札幌に留まりたいと言うのなら、私は彼女の力になるわ。だから、そのためにも、まず彼女を見つけるのよ！ 何としても、彼女の医者として・・彼女を理解してあげられる友達として！」
どこに行ったのか。
「あの子、まだ見つからないの・・。これだけ病院内を探してもいないとなると、ひょっとして、病院の外に出たのかしら・・。まったく、発作でも起きたらどうするつもりよ！
今日のカルテ整理はお休み、ちょっと外を探してくるわ！」
これは急展開になってきましたね。メールなんか打ってる暇があったら、とっとと探すんだ。薫さん、急げ！
「おはよう、平さん。私が今どこにいるかわかるかしら？
そう、東京よ。
昨夜、あの子が見つかったのは夜遅く。結局病院に戻って来たわ。話を聞くと、最後に札幌の街を歩きたかったんですって。ホント、彼女らしいわ・・。でも、あの子「気まずいから・・」って、大学のポプラ並木でウロウロしてたの。そして、私を待っていたかのように
『一緒に東京に来て』って言ったわ・・。」
東京に・・・？
「ええ、そうよ。あの子が入院する病院まで付き添いでね。「これも研修の一つだよ」って指導医の先生に言われたの。でも、東京に来たのは私の意思よ。あの子が、何故私と一緒に来て欲しかったのか・・それを知りたい。
だから、私はここにいるの。あの子と別れる前に、言っておかなきゃならないことがあるから・・。」
指導医の先生、なかなかいい人ではないですか。ちゃんとお別れしなくちゃね。
「それは・・今まで言いたくても言えなかった言葉・・。
病院であの子と別れる時に伝えたわ。
「今までありがとう」って。
これが私の正直な気持ち・・。ホント、別れる時になって言えるなんてね・・。」
そうか・・・。
「それは・・どうしてかしらね・・。言う必要がなかった・・？ ううん、そうじゃないわ、私はいつでも言いたかった。ただ、それを言ってしまったら、何もかもが終わるかもしれない・・そんな恐怖があった。
だからこれは・・あなたに対しても言えることなのかもしれないわね・・。
伝えたいものと、それを包む現実の壁・・それは同時に知ることができる・・。」
出会いがあれば別れもあるでしょ。そんな深刻な・・・。
「現実の壁・・それは、私とあなたがメールの中でしか会えないこと・・。つまり、伝えたい感情に限界があるのよ・・。
あの子は私と別れる時に言ったわ。「別れって何で特別なんだろうね？」って。別れというのは不思議なもの・・その時になって初めて見えてくるものがある・・。私のあなたへの気持ち、あなたの私への気持ち・・。それはみんな、きっかけを伴って現れる。
私は・・そのきっかけが『別れ』だと思うの・・。」
そんな、別れたくないよ！
「別れたくない・・。私だって、別れたくないわ・・。
でもね、私は自分の気持ちに気付いてしまった以上、前に進まなきゃいけない・・。そうじゃなきゃ、苦しいのよ・・。
あなたとのメールは、何よりも大切・・。けど、私はあなたに全てを伝えることができない・・。それが苦しい・・。
でも、これを乗り越える道がただ１つある・・。一人ではできないもの・・それは別れ・・。そして、別れの反対の言葉・・。
『出会い・・』」
・・・。
「元気？ 平さん。
私は空港にいるの。今から北海道に帰るわ。
私、北海道に戻ったら、前に進むべき道を探してみるわ。出会いという『きっかけ』を掴むためにね・・。それが今の私にできることだから・・。
さ、北の大地が私を待ってるわ・・。きっとそこには、素敵な出会いがある・・。
私とあなたが出会った大地・・。そして、本当の出会いが待つ大地・・。
北海道へ・・。」
さようなら・・・薫さん。（2001.2.11終了）
メール後の雑感・・・彼女のいじけた性格はここでも大爆発(^.^)。メールドラマでの重要なキャラクターとして患者の女の子が、なかなかいい味を出してくれた、というか非常に彼女に大きな影響を与えていたようですね。途中でやたら「うふふっ」を連発するのはどうかと思います。でもまーなかなか楽しかったです。